神田のオーラル・ヒストリー Vol.3 広瀬 征由さん「町会と神田祭」

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神田祭に関わる人たちにとって、神田祭はどのような意味を持つのでしょうか?

広瀬 征由さん (神田在住)
聞き手:三科清一郎さん(鍛冶町二丁目町会所属)

※2023年5月28日収録

神田祭四年間のブランクの影響

三科さん(以下、三科):
今回やってみて分かった問題点とか、次回また2年後に控えてますけど、それに備えてこれは今からやっておいた方がいいとか。今回やってみて気づいたとか。それから4年間のブランクがあったということの影響とかですね。
今の時点で総括するとどんなふうに感じますか。
広瀬さん(以下、広瀬) :4年間のブランクは結構大きいですよね。 町会員さんも正直に言って少なくなっているんですよ。再開発っていう話が出ていまして。うちの町会や近隣町会も含めて、どういう風になっちゃうんだろうなっていう。無くなりはしないと思うんだけど存続がちょっと厳しくなるなってことはもう目に見えている。 人数もそんなに増えてるわけじゃないし、少子高齢化っていうのがまず裏返しにあるので、今後2年ごとに行うお祭りがどういう感じで行われるのか、運営できるのか、どこまで運営できるのか。 現に今うちの地区で、某町会は神輿今回あげられなかったんですよ。なので、そういう時代がうちの町会も含めて起こりうることはもうひしひしと感じられてるので。少子高齢化が全て悪い方に悪い方にいってしまうので。 格式ある神田明神の歴史あるお祭りなんだけど、今後どういうふうになるのかってのがすごい心配ですね。
三科:あそこの町会があげられなかったってことですが、普段ですと連合組んでいくわけですよね。それがちょっと形が変わっちゃったっていうことですか?
広瀬:そうですね。三科さんが言ってるのはまたあっちの違う地区のやつかな。 僕が言ってるのはうちの地区の中の一町会が今回はあげられなかったっていうのが、なんか他人事ではないなっていうのが非常にありまして。
それを何とかどうしたらいいのかっていうことをもう全てグローバルに他の地区も含めて考えなきゃいけないのかなっていう時代になってるかなっていう。
それこそお神輿1基あげるのも人数が沢山いないと担げないんですよ。10分20分担ぐだけだったら本当に20人もいらないぐらいですけど、長丁場ですから。神田明神に行って帰ってくる間ずっと担がなきゃいけない人数を考えると、とても20人30人じゃ追いつかないんですよね。¹本当に何百人いないといけないなっていうメンバーなんで、それが今後どういうふうになっちゃうかなっていうのがあるので。
そこも含めて、町会としてその辺が非常に不安ですね。正直言ってどうなっちゃうのかなっていう。
あんまり先のこと考えるなっていうふうに楽観的に考える方もいらっしゃると思うんだけど、でもやっぱり次の世代、後継者っていうことを考えないと、お祭りは特にできないかなと思いますね。

¹神田駅から神田明神までは約1.5km

三科:グローバルっていうお話で私の方から一つだけあるんですけど、今回神田明神さんからの依頼で、私の町会の神輿にウクライナの人の担ぎ手をお招きしたんですよ。
ものすごく戦力になったってわけじゃないんですけども、いずれはそういう時代が来るかなっていうふうに見てます。
広瀬:多国籍ですね。うちの町会に専門学校があって、昔は英語の先生が入ってたことは記憶にあるんですけど、今回は来られなかったですね。2年4年後の動きがどうなっちゃうのかってのが先行きの不安ですよね。

あとは神田明神さんがこう言っちゃなんですけど、結構今アニメの聖地化っていうことで謳ってPRしているじゃないですか。氏子のための神田明神ですからって言いながらも、アニメの聖地化して宣伝相手はもう全国区なっちゃっていますので。 他の方も思ってる方もいらっしゃると思うんですけど、氏子の方にもうちょっと向いてくれよって言いたいですよね。広い意味でお金を集めることは神田明神としてはえびす様なんで良いことなのかもしれないんですけど、でもやっぱり氏子があっての全国であってもらいたいなってのはありますね。
三科:そうですよね。魂入れのときに、一基何万円か払うっていうことを聞いてえっと思いました。いい商売なさってるなと思いましたけどね。
広瀬:神様のことだからあんまりそうやって歯向かっちゃいけないってみんなが言うんですけど、それはそれこれはこれっていうふうになっていくかもしれないですね。

神田祭をやってみて良かったこと

三科: 次の質問ですが、今回高齢化の問題、それから4年間のギャップがあった、人出も少なくなってるが。
逆にそういう中でやってみて、やっぱしここが成果ありましたやってよかったねという部分は。
広瀬:そうですね。やっぱり神田祭があるからこそ、町会員の結束が固まるなというのがあります。
普段そういった大きい行事って、町会員がざらっと全部動くっていうことがないんですよ。女子部だけとか防災部だけの動きはちょこちょこってあるんですけど。
でも全体を通して、3日間なり町会員で一致団結して固まって動いてってできるのは、もう神田祭しかないなって。

それでみんなの気持ちが一つになるっていうのが、この神田祭なんだなっていうのが、それはもう否定できない事実です。
三科:広瀬さんのいらっしゃる地区ってのは新築マンションなんかあるんでしたっけ。
広瀬:マンションはね、まだ少ないですね。
三科:そうですか。実は私のところの周辺ですと若干あったりして。そういう新しく入った方をどう取り入れていくかっていうあたりが課題。
少なくともそのお祭りの賑わいについてうるさいと感じてもらわないようにしていただきたいっていう、そういう何か関係ができればいいなと思ったんですけど。
広瀬:そうですね。
実はうちのマンションに4・5年前に引っ越しされた人がいて。4年前のときは神田祭をマンションの上から眺めてたんですって。こういうお祭りがあんだなやってみたいなって思いながら、4年間過ごしてたらしいんですよ。
そしたらその方がついこの間「私も町会に入ってお神輿担ぎたいんですけど」と相談が来まして。ぜひぜひやってもらいたいですねっつって。もうそういった気持ちがある方はウェルカムなので、まずは町会員さんに入会していただいてっていう話になって。
お祭りもそうですけど、その準備段階の神輿を出して神輿の入る御仮屋を建てるときもお手伝いしていただいて、お祭りはもちろん参加していただいて。もうしっかりとけ込んでいただいて、青年部員の1人になっちゃっています、素晴らしいです。
我々はそういったきっかけをあまねく取り入れるように、ストライクゾーンを広げてます。なので、町会員さんになっていただければまず問題ないです。住んでることは基本的な条件なんですけど、もちろん法人の方もOKなんで。

町会の規定

三科: 実は私は町会がある地域に住んでないんですけど、活動をやってるという結果、町会から「お前、役員になれ」って言われていて。いや町会の規定上そもそもなれるんですかねって思うのですが。
ただそういう声もあったりしてそれは名誉なことなんで、規定上OKであればいいですよってね。
町会員でない分色んなところでぶらぶらしてるもんですから、そういうネットワークをうまく使ってほしいとかね、そういうことがあります。お囃子の中で地域コミュニティ担当を命じられて、他のところとコラボするとかね、そういったことをよく考えてくれなんて。

実は今回も隣の町会のお囃子とコラボして、一緒に迎え囃子をしました。今後いろいろお囃子も呼ばれてイベントに行くときに人手が足りないときは融通し合いましょうとか、そのためには同じ神田囃子でも違う部分があるのでちょっと調整しましょうとかね、なんかそんな話をしてるんですけどね。
広瀬:すごいっすね、それ面白いっすね。

さっきの話にちょっと戻しますけど、町会の規定ってあるじゃないすか、会則。町会員であるべき方の原則っていうのは、住んでる人それから法人で関わってる人っていう、基本的には町会の会費を払ってる方なんですよ。
うちの町会で今度総会があるんですけど、会計さんから、町会員なのか町会員じゃないのかって線引きが難しい分かりづらいっていう話が出まして。
コロナもあって、会費を払ってない方、滞納されてる方が非常に目立っちゃって。やっぱり会計としてはそこの線引きをはっきりしないと、何かうやむやで。
僕もすごい分かるんすよ、気持ちが。会計さんってのは一生懸命やればやるほど、そこのボーダーにいる方をはっきりしないと気持ち悪いってすごい分かるんすよ。
この間、大災害用の非常用トイレとか非常食とかの防災品を町会で負担して配ったんですよ。そんときに町会員であるか町会員でないかっていうことで配り方が全然違うんですよ。なので、町会員であれば問題なく配れるんですけど、町会員でないと配っちゃうと逆におかしいよねってなったんです。やっぱりお金払ってもらってないのに他の町会員さんと同じような扱いしちゃうってのはどうかなっていうのがあって。
なので町会の規定として、今回その辺のすみ分けをはっきりさせようってことになったんですよ。

これはいいか悪いか別として、やっぱり運営する側にとってはそこは非常に難しいと思うんですよね。昔はそんなことなかったんですけどね。

語り手三科さん、聞き手広瀬さんのインタビューはこちら

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