開催レポート ”千代田での丁寧な暮らし”を話そうワークショップ~第3回 違いを『想像する』優しさのある暮らし

by 管理者
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2023年12月10日(日)に、第3回「千代田での丁寧な暮らしを話そう」~『想像すること』で穏やかに開かれる暮らし~を千代田区在住の方を中心に参加者6名・企画メンバー4名・ゲスト1名の計11名の対話型ワークショップとして開催しました!
私たちは、『丁寧な暮らし』をキーワードに、
①新たに出会った仲間と答えのない問いを考えることを楽しむ。
②その新たな出会いが繋がりになる。
③生活者としての等身大の言葉を発信、共有できる場となる。
以上のことを目的に活動しています。

 

1.プロローグ

はじめに、「効率的であることが優先されがちな都市の生活の中で、それに相反する『丁寧な暮らし』を切り口にした対話を通じ、各々の考えを深める」という目的や、これまでの開催の経緯についてお話ししました。

第2回からゲストトークという形式を取り入れたことで、より視点が多彩となり企画メンバーにも新鮮な発見が毎回あり、継続負担も軽減されました。また、発信・共有の場としての伸びしろも感じられるようになってきました。バトンが繋がるようにして回を重ねることができているので、場がもたらしてくれた繋がりをこれからも大切にしたいと考えています。

また、新たな気づきとして、「丁寧な暮らしとは『日常愛』に満ちた暮らしではないか」「経済成長が鈍化し地球環境の限界が肌で感じられる昨今、シンプルな幸福感がより大切になるのではないか」ということについてもお話ししました。

今回のテーマは、
想像する』をキーワードに多文化共生を日々の暮らしの視点で考える。
です。

日本語教師の林(津田)麻美さん、言語学者の伊藤雄馬さんをゲストにお呼びしました。
企画メンバーの自己紹介を経て、早速本日の内容に入っていきます。

オープニング
2.今日の一冊

最初は、「今日の一冊」と題して、本日のゲストの伊藤雄馬さん著『ムラブリ 文字も暦も持たない狩猟採取民から言語学者が教わったこと』を紹介しました。
タイやラオスの森に住む狩猟採集民「ムラブリ」が話す「ムラブリ語」は話者数500名程度。消滅の危機にあるこの言語に魅了され15年にわたり研究を続けた伊藤さんの研究成果をまとめた一冊です。

この本を紹介することになったのは、第3回へむけたミーティングで、『言語』『文化』『暮らし』『想像』といったテーマが並んだときにこの本の書評を思い出し、拝読したのがきっかけです。

「現前性」や心が下がることを好意的に捉える点などが、これまで考えてきたことと重なったこと、またムラブリ語の響きが大変美しく、耳にしたことのない言語を「想像する」楽しみも実感できるのでないかと考え、今回紹介することにしました。
そして、音源を入手するため著者の伊藤さんにご連絡したのがきっかけで、ゲストとしてお越しいただくことになりました。

「今日の一冊」の紹介

ここでは伊藤さんと本についてのトークをさせていただきました。

自分が見ているムラブリは本当のムラブリではなく、自分を通したムラブリであるという認識から、多文化というのはあくまでも捉える側の主観である、と伊藤さんは指摘します。これは、身体性を伴う言語の研究を目的にムラブリと日本を行き来する伊藤さんだからこそのお話だと感じました。

伊藤さんのお話
3.自己紹介

続いて、「あなたが、暮らしてみたいなあ、もう一度暮らしたいなあと思う国はどこですか?」というお題で、参加者の皆さんの自己紹介をしました。
豊かな自然と共生しているイメージがある北欧、移民が多く文化に層を感じられるフランスや真面目な人柄に魅力を感じるドイツ、シンプルだけど豊かに暮らしている印象のイギリスなどの欧州、そして、もちろん日本や自身の故郷を上げる方もいらっしゃり、参加者の皆さんそれぞれの人となりが感じられる多彩な内容でした。

4.ゲストトーク

本日のゲストトークは、日本語教師の林(津田)麻美さんで、~『想像すること』で穏やかに開かれる暮らし~についてお話しいただきました。

高校時代に感じた日本の窮屈さ、そこから海外に飛び出し、約20年間、北米を中心に海外で日本語を教えてきた経験を経て、現在、区内大学で留学生に日本語を教える林さん。時々で感じてきた文化的な違い、その違いに対する自分の捉え方、そこから見いだした林さんなりの多文化共生へのヒントなどをお話くださいました。

また、私達日本人が話す日本語にも実は多様性があることをワークを通じて認識しました。母語話者ではない方の日本語に対しても、その背景を日頃から想像する意識をもつことで、より寛容に捉えることができるようになるのではないかというメッセージをいただきました。

【林さんのトーク一部】

  • 団体行動が苦手で、そういうのが好きになれない自分が悪いんだと感じた時期があったが、海外に行って、それが日本人である前に、自分のアイデンティティであることを知った。
  • 自分をつくるものはナショナリティだけではないということを知った。
  • 日本では、外国人として働いていると「日本語上手ですね」と言われるが、日本人枠で働きだすと、十分ではないということになり、能力より言語で判断されてしまう傾向にある。
林さんからのお話
5.ブレイク 「想像する」を楽しもう!

ここで、ちょっとブレイクということで、今日の1冊で紹介したムラブリ語の響きを想像して楽しむ、という体験を行いました。
「その言葉は歌うような響きで、文が長くなればなるほど声が高くなっていき、最後には裏声に到達して、ここまでくると堰をきったように長く伸ばされ、余韻を残して終わる」という書籍からの一文を紹介し、改めて伊藤さんからムラブリ語の響きに関してレクチャー頂き、実際に生のムラブリ語を聴きました。

ムラブリ語の響きは、真っ直ぐに誰かに届ける、というよりは、森に放つような印象を受けます。「都会には合わない」「鳥の鳴き声や木々のゆれる音が聞こえてきそうな響き」といった感想もありました。言語は身体性を伴うがゆえに、人間性を形成する重要な要素であることも実感する機会となりました。

6.対話

「異なる文化や言語をもつ人々が、固有の背景を保持しながら、同じ場所で共に暮らすことは難しいことなのだろうか。」というテーマで全体でトークしました。

前回同様に参加者の皆さんそれぞれの視点や考え方があり、異なる環境や歩みを経て育まれた人間性のバラエティとその豊かさを強く感じました。

【全体トーク一部】

  • カナダは移民の多い国なので、ゆるく共生しているイメージ。サラダボールという感覚。メルティングポットという表現もあるが、それとは異なる感覚。
  • 年齢を重ねると考えが固定化してしまい受け入れるのが難しくなるという側面もあるのではないか。
  • SNSなどで自分の部分的な嗜好や傾向が強調、増幅され、極端な思考になりやすいのかもしれない。
  • 多様性は日本人と外国人だけでないと思う。日本人の中にもいろいろな人がいる。多様性を受け入れるには柔軟性が必要だと感じる。発達に障害がある子ども達と関わる活動をしているが、共通点を感じた。
  • 日本では、日本人とそれ以外といった感覚があるが、その感覚に入れたら逆に楽。学生の時に受け入れてもらえて生活しやすく感じている。
  • 内面を掘り下げることで、違いを超越する共通項を見出すことができるのではないか。
  • 小児科で騒ぐ外国人の子どもと注意しない親がいて、考え方の違いが明らかになる場面に遭遇した。やはりルールを知り、守ることも大切ではないかと思った。
  • 共存するというのは仲良くするのではなく、違う考えや違うことが共存すること。小児科でのシーンのように違いが立ち上がった瞬間こそが共存しているといえるのではないか。
ワークショップの冊子
まとめ

林(津田)麻美さんのゲストトークと、紹介書籍「ムラブリ」の内容と、その著者・伊藤雄馬さんのお話が響き合うような印象があり、参加者の方が自身の内面を掘り下げ、思いを巡らせる雰囲気が自然に作られていったように感じました。
また、議論の形をとらなくても、他者の考えがきっかけとなって自分の考えが導かれ、その自分なりの思いを躊躇うことなく発信できる場となっていることを改めて嬉しく思いました。

結論もなければ、考える意味も問わない、ただただ答えのない問いを同じ空間で共に考えることがもたらしてくれることについて、改めて深く考えてみたいと思う第3回でした。

「大人な時間でした」「自分に向き合える素敵な場でした」「自分の環境に落とし込んで考えてもらえたのが嬉しかった(林)」といった感想も頂戴しました。

今回参加してくださった皆さんに公式LINEの登録をお願いしたので、今後、告知や情報発信のツールとして、効果的に展開できればと思っています。

(主宰 黛茜さん)

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