2月2日に「ちよだの100年企業とこれからを考えよう!」の第1回目が開催されました。今回、100年企業として、神田豊島屋の取締役社長の木村倫太郎さんをお迎えし、豊島屋の歴史や事業などについてのお話、木村さんが考える地域と企業についてお伺いしながら、交流しました。当日は、12の参加がありました。
冒頭、本プロジェクトの発起人の脊尾さんから自身がなぜこれを取り組もうと思われたかの話がありました。企業がそのまちに存在する意味、価値を考えた時に地域で知ってもらい必要とされるためには、地域の課題や未来にどれだけ貢献できるかでないか考えたことや、関東大震災の時には、神田地区の一部の地域は住んでいる人と事業をしている人が助け合い震災を逃れたという史実があり、それから100年というタイミングで、今、同じように協力していけるとは思えず、関係性が変わってきている中で、在勤、在住の人がいっしょに千代田の未来を考えていくことが必要であると感じたこと。そのためには、長らく地域で活躍している企業さんから学ぶことは多いと考え、今回の「ちよだの100年企業とこれからを考えよう!」に至ったことが話されました。
ゲストの木村さんからは、豊島屋さんが「居酒屋文化」や「白酒」などの新しい酒文化を発祥してきた企業であり、江戸名所図に掲載されていること、ひなまつりの歌にでてくる「しろざけ」が豊島屋さんの白酒を指すことなど、地域の歴史として大変興味深いお話をお伺いしました。また、事業として「自然が酒を造る。我々は、ただモノを移動させているに過ぎない」という信念に丁寧な酒造りをしていることなどが紹介されました。
さらに、地域との連携としては、酒蔵のある東村山では地域の人の持ち寄り企画を実施する「豊島屋フェスタ」を開催、千代田区の神田では、神田限定にこだわった日本酒「利他」の展開していることについてお話がありました。
特に、神田に関しては、友人から神田に行ったことがないと言われたことや、土日の神田が寂しいと感じたご経験などから「神田を日本酒で盛り上げたい」という思いをお持ちで、多くの人に神田に人に来てもらうことを想定し、神田ならではの体験を提供したいと、神田限定販売、または神田のお店でしか飲めない「利他」を展開しているお話もありました。
一方、木村さんが力を入れている商品として、世界の賞を受賞した飲むみりんMEを、新しいお酒のジャンルにしたいと、その可能性についてもお話いただきました。煮切れば味を損ねずにノンアルコールの飲み物となること、江戸時代からみりんを使った柳陰がありカクテルとして、また、スイーツ等の多様な展開の可能性もお話いただきました。
パネルトールや会場とのディスカッションでは、「利他」を神田限定にしている点について、その意義についての話となりました。グローバルな時代において、あえて地元にこだわり大切にすることがマーケティングの戦略として強みとなる可能性が高いこと、自分の企業があるまちが元気であってほしいという願いから神田の活性化に貢献したいことなどが話されました。
また、若くして老舗企業の継承者となったことに対しての質問も多くありました。社史をみてすごい企業だったんだと思いこれに関わりわりたいと思ったことや、また、ご自身も100年後も見据え、豊島屋の歴史や神田という町の中での何かを残したいと思われているそうです。そうした長い目で企業の在り方、まちとの関りを考えられるというのは、改めて老舗の企業ならではと感じます。
さらに、豊島屋さんをみんなで応援したい場合にはどのようにしたらいいのかといった質問もありました。口コミやSNSなどでの応援に加え、東京で作っている東京のこだわりのあるお土産として活用をしてもらいたいというお話もありました。地域のみんなで、千代田の歴史ある企業を守り、応援していくこともできたらと思われます。
老舗の歴史を知りたいと今回参加して下さった方も多くいらっしゃいましたが、むしろ、若い継承者である木村さんのポジティブでチャレンジャブルな姿勢から、未来を感じることができたとして、第1回目は終了となりました。
参加者の方から「これからも参加したい」「活動を一緒に行いたい」という声もあり、今後も新しいメンバーも交えながら、次回は5月くらいの開催を目指し、準備を進めていこうということになりました。また、参加者の方からも、今後話を聞きたい企業として、神田の古本屋、興産信用金庫、龍角散、神田越後屋(豆腐屋)、商品(酒、食事、芸事、スイーツ等)のある企業、老舗蕎麦屋さん、須田町三角地帯の店、銭湯の稲荷湯さん、中華料理店、提灯屋さんなど、参加者の方からも色々なアイデアもあり、地域の方の協力を頂きながら、進めていければと思います。
【参加者の声】
- 木村社長の利他やMEの開発上市への思い入れとポジティブ思考にとても感心させられました。また神田というマーケットにこだわり秋葉原をターゲットから外したりと、勇気ある決断にも敬意を表したいと思いました。豊島屋さんを承継するのに余り悩まなかったようですが、重い伝統と事業スケールに押し潰されずによく努力されました。次回は、事業承継で多いに悩まれながら少しずつ事業拡大された事例があれば紹介いただきたいと思います。
- 老舗の歴史について知りたいと思い参加しましたが、若い社長がお話される内容は、過去を振り返るというより、未来に向けてのパワーを感じポジティブな気持ちになりました。
- いろいろな方が参加していらっしゃいそうで面白かったです。
- 老舗企業の地域に対する思いをお聞ききして、とても有意義な時間でした。また木村社長の社史が家業を継ぐ決意のきっかけになったというお話しが印象的でした。
- 神田豊島屋さんの、若社長のパワフルさに、新しい時代の未来を感じました。「神田という町」「飲むみりん」「利他」この3つに、こだわりをもっていらっしゃる。このこだわりに、一切ブレがないのがとても素敵でした。神田豊島屋さんに、ファンになりました。
- 参加された他の方にも、ザックバランにお話ができたので、刺激をもらいました。
- 100年以上続く企業さんのお話は確かに聞いているだけでも面白いのですが、「これからを考えよう」と称するなら、もっと先を読んで対象の企業さんからこれからを引き出したり、参加者に直接関わる「我がこと」としての感じ方を促すことも必要ではないか。
- 先祖代々続いてきているお店・企業だからこそ、自分の孫世代やその孫の世代など、後の世代のことを考えて、事業を行えるのだと感じました。グローバルな時代にあえて、神田にローカライズしていく戦略は面白いです。